2026.02.23

光学設計の基礎:偏心の発生メカニズム

光学製品の設計・製造において、設計値通りの性能が出ない最大の要因の一つが「偏心(ディセンター)」です。どれほど優れた光学設計であっても、製造現場で各レンズが正しく配置されなければ、その性能は発揮されません。本記事では、偏心が発生するメカニズムから、性能への具体的な影響、そして設計・製造段階で講じるべき対策について、基礎からポイントまでを解説します。

偏心(ディセンター)とは何か?

光学設計における「偏心(Decentering)」とは、レンズや鏡筒などの光学素子が、理想的な光軸(設計基準軸)からずれて配置されている状態を指します。理想的な光学系は、すべてのレンズの中心が一直線上に並ぶ「共軸系」として設計されますが、現実の製造プロセスでは必ず誤差が生じます。

偏心は大きく分けて以下の2種類に分類されます。

  • シフト(平行偏心): レンズの光軸が、基準軸に対して平行にずれている状態。
  • 面シフト(面偏心):レンズの面同士が平行にずれている状態。
  • ティルト(倒れ偏心): レンズの光軸が、基準軸に対して斜めに傾いている状態。
  • 面ティルト(面偏心):レンズの面同士が斜めに傾いている状態。

実際の製造現場では、これらが複合的に発生することがほとんどです。微小なずれであっても、高解像度が求められるセンサーやレーザー光学系においては、致命的な画質劣化を招くことになります。

偏心が光学性能に与える影響

偏心が発生すると、光学系には解像度が低下するといった事象が現れます。

コマ収差の発生 

最も顕著な影響は、「コマ収差」の発生です。通常、画面の中心(軸上)では発生しないはずのコマ収差が、偏心によって画面の中心(軸上)にも発生し、点光源が彗星のように尾を引いた形状に結像します。これにより、コントラストと分解能が著しく低下します。

非点収差の発生

「コマ収差」と同じく「非点収差」も発生します。通常、画面の中心(軸上)では発生しないはずの非点収差が、偏心によって画面の中心(軸上)にも発生し、点像が楕円のような形状に結像します。これにより、コントラストと分解能が著しく低下します。

歪曲収差(ディストーション)の発生

偏心が発生すると、歪曲収差が発生します。結果、まっすぐな線が外側に膨らんで見えたり(樽型歪曲)、内側にへこんで見えたり(糸巻き型歪曲)歪曲します。

像面湾曲と像面の倒れ 

偏心が発生すると、結像面(像面)そのものが傾いてしまいます。結果、画面全体の焦点を合わせることができなくなり、画像の右側はピントが合っているのに、左側だけボケているなどといった現象が起こります。これを「片ボケ」と呼びます。

偏心が発生するメカニズム

偏心は「なぜ」発生するのでしょうか。その要因は、レンズ単体の加工から組み立てに至るまで、複数の段階に潜んでいます。

1. レンズ加工時の誤差(芯取り誤差)

ガラスレンズの場合、レンズが研磨された後、外径を削って機械的中心と光学的中心を合わせる「芯取り」という工程を経ます。しかし、この工程での加工精度が不十分な場合、レンズの外径と光軸が一致しない「レンズ単体の偏心」が残ります。これをそのまま鏡筒に組み込むと、必然的に光軸がずれてしまいます。

2. 鏡筒とレンズのクリアランス(隙間)

レンズを鏡筒に挿入して固定する際、組み立てを可能にするために、レンズ外径と鏡筒内径の間にはわずかな隙間が必要です。この隙間がある分だけ、レンズは重力や固定時の力によって「シフト」が発生します。

3. 組立時の誤差

鏡筒にレンズを挿入する際に、コバ(縁)にゴミが挟まったり、鏡筒の突き当て面(レンズを受ける面)が加工不良で平坦でなかったりする場合、「ティルト」を引き起こします。

光学設計なら、光学レンズ設計.comまで

いかがでしたでしょうか。今回は、光学設計における偏心についてご紹介しました。

光学レンズ設計.comを運営するジュラロン工業株式会社では、光学レンズの設計はもちろん、金型製作・成形から組立まで一貫して対応しています。この一貫対応体制により、それぞれの工程で発生する誤差の傾向を把握しながら光学設計を行うなど、光学的な機能のみならず、生産性までもを考慮した光学設計を行うことが可能です。

単レンズからレンズユニットまで設計が可能ですので、光学レンズの開発設計でお困りの場合はお気軽にご相談ください。

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