2025.09.20

光学設計の基礎:収差の種類

当記事では、光学設計の基礎となる「収差」について、その種類や特徴をわかりやすく解説します。

収差とは?

収差とは、レンズや鏡といった光学系を光が通過する際に、像がぼやけたり歪んだりする現象を指します。理想的な光学系では、一点から出た光がレンズを通過した後、再び一点に集まることで鮮明な像が結ばれます。しかし、現実の光学系では、光の波長やレンズの形状、光がレンズに入射する角度など、さまざまな要因によって、光が集まる位置がずれてしまいます。このずれが、私たちが目にする像の不鮮明さや歪みとして現れるのです。収差を理解し、適切に補正することは、カメラや顕微鏡、望遠鏡など、高性能な光学機器を設計する上で不可欠な要素となります。

単色収差

単色収差は、単一の波長の光(単色光)によって引き起こされる収差です。光の波長に関係なく発生するため、この種の収差は光学系の形状や光の入射経路に大きく依存します。主な単色収差には、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の5種類があります。

球面収差(Spherical Aberration)

球面収差は、レンズの中心部を通る光と、周辺部を通る光が異なる位置に集まることで発生します。これにより、像全体がぼやけて見えます。

コマ収差(Comatic Aberration)

コマ収差は、軸外にある点光源から出た光が、レンズを斜めに通過する際に発生する収差です。これにより、点像が彗星(コマ)の尾のような形にぼやけて見えます。特に、望遠鏡で視野の端にある星を観察すると、星が尾を引いたように見えることがあります。

非点収差(Astigmatic Aberration)

非点収差は、軸外にある点光源から出た光がレンズを斜めに通過し、互いに直交する2つの異なる線上に焦点を結ぶことで発生します。これにより、点像が水平方向と垂直方向で異なる位置に結像し、像全体がぼやけて見えます。人間に置き換えると、乱視にあたります。

像面湾曲(Field Curvature)

像面湾曲は、平面にある被写体の像が、平面ではなく曲面上に結像してしまう現象です。これにより、像の中心にピントを合わせると周辺がぼやけ、逆に周辺にピントを合わせると中心がぼやけてしまいます。

歪曲収差(Distortion)

歪曲収差は、像の結像位置が理想的な位置からずれることで、像の形が歪む現象です。特に、広角レンズで撮影した写真で、まっすぐな線が外側に膨らんで見えたり(樽型歪曲)、内側にへこんで見えたり(糸巻き型歪曲)する現象がこれにあたります。

色収差

色収差は、光の波長によってレンズの屈折率が異なることで発生する収差です。太陽光や電灯の光など、複数の波長を含む白色光がレンズを通過する際に、波長の短い青い光はより強く屈折し、波長の長い赤い光は弱く屈折するため、色ごとに焦点位置がずれてしまいます。このずれが、像に色の滲みやぼけとして現れます。虹がプリズムによって分光されるのと同じ原理です。

色収差は、焦点の位置がずれる軸上色収差と、像の倍率が色によって異なる倍率色収差に分類されます。

軸上色収差

軸上色収差は、レンズの中心軸上にある点光源から出た光が、波長によって異なる位置に焦点を結ぶ現象です。これにより、像の周りに色が滲んだり、像全体がぼやけて見えたりします。

倍率色収差

倍率色収差は、レンズの中心軸から離れた位置にある点光源から出た光が、波長によって異なる倍率で結像する現象です。これにより、像の周辺部で色ずれが発生し、像の輪郭が赤や青、緑などの色に滲んで見えます。特に、写真の被写体の輪郭に沿って色のにじみが見られる場合は、この倍率色収差が原因であることが多いです。

これらの収差を補正するためには、屈折率や分散率の異なる複数のレンズを組み合わせたり、非球面レンズを使用したりするなどの設計技術が用いられます。これにより、より鮮明で忠実な像を結像させることが可能になります。

光学設計なら、光学レンズ設計.comまで

いかがでしたでしょうか。今回は、収差の種類についてご紹介しました。

光学レンズ設計.comを運営するジュラロン工業株式会社では、光学レンズの設計はもちろん、金型製作・成形から組立まで一貫して対応しています。この一貫対応体制により、それぞれの工程で発生する誤差の傾向を把握しながら光学設計を行うなど、光学的な機能のみならず、生産性までもを考慮した光学設計を行うことが可能です。

単レンズからレンズユニットまで設計が可能ですので、光学レンズの開発設計でお困りの場合はお気軽にご相談ください。

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